中国語の“了”は本当に難しい…。
実はここ半年ぐらいずっとゆっくりと『文法資料』を作っていて、自分にとっても良い勉強になり、予定では4月までに作り終えてマレーシアから日本へ帰国後その資料を元にYoutubeで文法講座を全部やってしまおうかなと思っています。
ホワイトボード(または黒板)を使った講義系の中国語の文法動画は見たことがないので、せっかくなので僕がやってしまおうかなと言う魂胆です。予定では中国語の基礎文法(基礎と言ってもHSKや中検に必要な全範囲)を網羅していこうと思っているので体系的に中国語を学びたい方には便利な動画になるんじゃないかなと思っております。
さて余計な話はここまでで本題に入りますと、先日“了”に関して調べていたら、実は「不要」と「不要了」はニュアンスが異なるということを知ったのでぜひこれはシェアしたいと思い立ちこの記事を書きました。
もしかしたら感覚的に「不要」と「不要了」の違いを理解している方もいると思いますが、今回はそれを上手く言語化してお話ししていきます。“了”の復習も一緒にやっちゃいましょう。

「不要」と「不要了」の違い
まずは結論からいきますと「不要」と「不要了」の違いは丁寧さにあります。
・不要➡︎要りません。
・不要了➡︎(“不要”よりも丁寧に)要りません。
日本語で単純に訳すとそこに明白な違いは見られないのですが実は“了”を入れると入れないよりも丁寧さが加わります。
そんな!結構断る時に“不要”って言ってしまっていた…。没礼貌に思われたかな。
多分大丈夫ですw外国人の中国語で“了”一個でそこまで気にする人は稀だと思いますので、実際そこまで気にすることではないと思います。
しかし今回お話ししたいのはこの”気づき・学び”なので次項からの説明は文法好きまたは好奇心旺盛な方のみお読みください!
基本の“了”の復習
さてこの項からは「不要了」が少し丁寧になる理由を解説していきます。こう言った細かい所を学んでいくのも語学の面白い所ですね。
その前にまずは“了”の用法を復習します。中国語の“了”には簡単に二つの用法があります。
アスペクト助詞の“了”:動詞の直後に置き、動作の実現・完了を表す。
語気助詞の“了”:文末に置き、新しい事態の発生・変化を表す。
いくつか例を確認してますと、
アスペクト助詞の“了”
①我买了一本书。
私は本を一冊買った。
②昨天我下了班,给我妻子打电话。
昨日仕事が終わってから、妻に電話をかけた。
②は前半部分「昨天我下了班」で仕事が終わった→“完了”してから妻に電話をかけたという構造になっています。
語気助詞の“了”
①我不想去北京了。
私は北京に行きたくなくなった。
②二十岁了,我可以喝酒了。
20歳になったから、お酒を飲んで良くなった。
①は「A:北京に行きたかった」という状態から「B:行きたくなくなった」というA→Bへの気持ちの変化を表しています。
②は前半部分では「19歳→20歳」、後半部分では「お酒ダメ→お酒OK」になったという変化を表しています。
②が示すようにこの“了”は文脈的に変化の意味を伴うのであれば形容詞句・動詞句だけでなく名詞節にもつけることができるんですね。↓以下参照
・冬天了,天气冷了。
冬になって、天気も寒くなった。
・星期五了,时间过得真快。
金曜日になった、時間が経つのが本当に早いよ。
細かく見ていけば“了”には様々な用法があり、それはここではとてもじゃありませんが書ききれませんのでいよいよ「不要」と「不要了」が違う理由に関して考えていきましょう。
なぜ「不要了」は丁寧さが加わるのか?

先ほど“了”には語気助詞としての機能として新状況・状態の発生・変化があると説明しました。実はこの語気助詞は外面からの客観的な変化だけでなく頭の中での主観的な認識の変化も表すことが可能です。(先ほどの「我不想去北京了」もその例かも)
例えば「下雨了」は単純に「雨が降った」という「降ってない→降った」という変化だと考える方が多いと思いますが(正解です)、実は状況によっては次のような意味を含む場合があります。
(雨はずっと降っていたが主はそれに気づかず、降り始めてからだいぶ経って外を見てみると雨が降っていることに気づき)→「下雨了。」(雨だ。)
この例はただ単に雨が降り始めた「下雨了」とはニュアンスが異なり、客観的な事実の変化ではなく、あくまで主の頭の中の認識の変化になるわけです。
ということは「不要了」に関して次のようなことが言えます。
不要了:“了”を加えることで発話者の脳内では「要るか?要らないか?」の葛藤・思考が行われ、吟味した結果「要らない」という選択肢を取ったという結果が加わります。その結果「私はあなたの勧めに対してしっかり一度検討しましたよ」という「検討して”要る”可能性を考えたが→要らないという結果になった」という変化を表しているため、検討もしてない「不要」と違って丁寧さを感じるのです。
これは「我不想去北京了」と捉え方によっては似ているような気がしますね。こちらも「元々行く予定だったけど、何かしらの気持ちの変化や事情があり、北京に行くか行かないか迷って結果行きたくなくなってしまった」と文脈によっては捉えることができます。
ただこの場合は「嫌なことがあって→行きたくなくなった」と「迷う」という行為が無い可能性もあるのでこの短い例文では一概に「不要了」と同じ用法だと言い難いですが…。
要は流れ的には
①:「これいる?」と言われる
②:”要る”か”要らない”かで一応悩む
③:”要らない”という結論に至る
→この時に頭の中では「要るという状況も検討したが要るという選択肢は最終的に排除された」という変化が起こっている。
ということですね。
終わりに
中国語の文法は初心者にはとっつき易いですが中級以上になってくると本当に底無しで難しいです。特に今回の”了”は本当に厄介ですよね。
僕自身もまだまだ勉強中で、資料作成をしていく中でいろいろなことに気づかされます。深く考えてみたり、詳しく書いている本を読んでみたり、これが結構面白いんですねw
ぜひ皆さんも気になることがあればインターネットでも何でも使ってとことん追求してみるのも良いと思います。それが今後の学習、特に会話に直結するかしないかは別として新しい知識が増えるのも楽しいと思います。
またネイティブが近くにいれば彼らの感覚に教えてもらうのも一つの手ですね!実際「不要」と「不要了」の区別は普通のネイティブの方は意識しているのでしょうか。私たち日本人もよくよく考えたらそうだよねってこともたくさんあるので、そのぐらい細かいことなのかもしれません。
ただ文法の性質上研究がなされ上記のような違いが発見されていますので、僕は次回からは「不要了」と『一応検討しましたよ、でもごめんなさい!』という気持ちを表していきたいと思います。
それでは皆さんまた次回!発音講座と作文講座もチェックしてね😁下次再见,拜拜!