中国語学習方法

ハイコンテクストとローコンテクストの興味深いお話し

日本人の『察する文化』


『阿吽の呼吸』『以心伝心』『ツーカーの仲』

日本語にこのような表現があることからも実は日本人というのは多くを語らないことが美徳とされる文化社会です。他にも「空気読めよ」「察しろよ」なども同じく日本社会に根強くある文化であると言えましょう。

こうした社会には実は名前がついています。

ハイコンテクストソサエティ=High context society



そう、いわゆるハイコンってやつです。海外の人と仕事をしたことがない日本人はずっとこのハイコンの中で暮らすことになるので気づかないかもしれませんが、これってめちゃくちゃ高度なことをやっているんです。

もちろんハイコン=高度=goodなこと、というわけではありません。日本以外からしてみればとんでもない文化に映ってしまうことも少なくありません。

今回はそんなハイコン・ローコンについて詳しく解説していきたいと思います。なかなか面白いのでぜひ最後まで読んで、ご自身の仕事や人間関係に生かしてください。

ハイコンテクストとローコンテクスト



まずは下の図をご覧ください。左がハイコン、右に行けばいくほどローコン社会になっていきます。

日本人は世界でも稀に見る超ハイコン社会です。それとは対照的にドイツは超ローコンです。日本人とドイツ人が仕事をするときはかなりこの点を意識できないと大変なことになりそうです。


✅【ハイコンテクスト】:高文脈判断社会

日本語や中国語などを母国語とする社会で当たり前とされる「言わなくてもわかる」文化。言語的に考えれば、会話のシチュエーションや相手の表情、話し手の様子などから直接的に言葉を発しなくても相手の言わんとすることが読み取れる言語のことを指す。多くはその民族文化に共通の知識や体験があることから、言わなくてもコミュニケーションが成立する。日本人の「空気を読む」や「言わなくてもわかるだろ」と言う文化もここに起因している。

・直接的または単純表現よりも凝った表現を使う傾向にある
・質問された際に直接答えず相手に推測させる形で答えることがある
・論理の飛躍が多い
・曖昧な表現をこのむ
・多くは話さず、含みを持たせたがる


✅【ローコンテクスト】:低文脈判断社会

一概には言えないが主に欧米に多い印象が強い。いわゆる「はっきり言わないと分からない」「結論から言え」と言った考えが根強くある社会のこと。アメリカ人に日本人の「察して文化」が通用しないと言う理由は、英語と日本語のコンテクスト具合に大きな差があるからである。他にも「大事なことを三回言う」と言った考えもローコンである。

・はっきりとシンプルな表現をこのむ
・質問には直接的に答える
・曖昧な表現は好まない
・論理的に話す
・寡黙=美徳などと言う考えはない



このようにハイコン・ローコンで考え方がかなり異なります。どちらが良いと言うわけでは決してありませんが、気をつけなきゃいけないことはあります。ここではビジネスシーンを例にとってその気をつけるべきことを見ていきましょう。

ちなみに:ここは少し脱線ですがTwitterでよく次のような光景を目にしませんか?

『すいません。言葉足らずでした。ここで私が言いたかったのは〜』
『ちゃんと書かないとそう捉える方もいますので〜』



書かなくてもそのぐらい読み取ってよ、馬鹿かよ』と思うこともあるし、それもはや揚げ足取りだろと思っても上のように言ってくる超絶だるい人間いますよねw

おそらくこれもハイコンの影響でしょう。Twitterでは140字しか書けないことも理由にありますが、多くは書き手は日本人なら書かなくてもこのぐらいは当然わかるだろうと予想して書く傾向にあります。

それから『深読みする』のもハイコンの影響を強く受けた特徴です。

相手が言っている言葉の裏に何か特別な意味があるんじゃないか」こう考えて書かれてないことまで推測し、反論意見も論理がでたらめになってしまうなんてこともあります。もちろん日本人に限った話ではないですが、普段ハイコンに暮らすくせに相手の上げ足取りだけは絶妙にうまい人間も多くいるのがTwitterですね、と時折感じます。w

ビジネスは圧倒的にローコン?!


グローバルな職場環境では圧倒的にローコンに合わせるべきです。と言うのもハイコンの人間はローコンに合わせることができますが、逆は基本的にないからです。
例えばアメリカ人に日本人の察して文化を強要してもおそらく不可能です。「相手の言わんとすることを言語無し察する」と言う行為は皆さんの思う以上に高度なことであると言うことを覚えておきましょう。

しかし私たちハイコンがローコンに合わせることは比較的簡単です。ようはこれまでわざわざ言語化してこなかったことを言語化するだけなので。

ここで一つトルコ人とアメリカ人の例をあげましょう。
あるトルコ人(ここではマルコムとでもしておきましょうかw)と日本人の高橋くんが、最近入ってきたアメリカ出身の上司について愚痴をこぼしているシーンを想像してください。

マルコム:「ねえ聞いてよ、この前新しく入ってきたあのアメリカ人上司さ、全然わかってくれないんだよ。俺はプランBの方が良いって思って伝えたのにプランAなのかBなのかはっきりしろって怒られたんだ。言わなくてもわかれよって、なあ?」

高橋くん:「そのお前が今僕に話している愚痴はちゃんと直接そのアメリカ人上司に言ったのかい?」

マルコム:「まさか!めんどくさい。僕は信じてるんだ。彼が本気でわかろうと思えば僕言わんとしていることなんてすぐ理解できるってね、そんなの意識の問題でしょ。」



こんな感じですね。ここまで読んでくださった方はわかると思いますが、アメリカはローコンですので、ハイコンの考えを彼に期待してもほぼ無駄です。こう言った場合はハイコンがローコンに合わせるしかないのです。相手が「察してくれるだろう」と言う期待はグローバルに働きたかったら捨てた方が良いでしょう。

と言っても最初はすごく煩わしさを感じることでしょうが、ローコンになれた人と仕事をするときはまずは以下の点を注意しましょう。

✅大事なことは3回言う(会議など)

✅Yes か Noかははっきりする。できるできないも同じ

✅お願いするときには長ったらしい前置きは不要。直接依頼内容を伝える。

✅寡黙は美徳じゃない。とにかくコミュ力を意識

✅自分の気持ちはしっかり言語化しないと評価すらされない

✅ハイコンを前提にしない。ローコンを当たり前にする



まだ気をつけるべきことがあるのかもしれませんが概ね上のようなことをまずは意識すべきでしょう。ぜひ気をつけてみてください。

日本も最近はローコン化?



もしかしたら中には「yes no はしっかり言う」などの意見に対して当たり前じゃない?と感じた方も多いのではないのでしょうか。

そうです、日本のビジネス世界でもグローバル化の影響か考えが多様化し、徐々にローコン化が進んでいます。他にもこれは国籍による区別ではありませんが、若手社員と管理職の人間における共通知識の共有が難しくなっているのも事実です。若い人とある程度歳がいっている人の価値観は大きく異なることが多く、そのせいか両者ともストレスを抱えた経験はあるのではないでしょうか?

上司:そんなこと言わなくてもわかるだろう!
社員:言わないとわからんわ、エスパーかボケ



とこんな経験をされたり、聞いたりしたことはないでしょうか。こう言った理由から日本国内でもローコン化がどんどん進み、人によっては働きやすい優しい社会になっているかもしれませんね。

またローコン社会には論理の飛躍は許されません。相手と自分の共通認識が基本的にはないことが前提です。このような社会に順応していく過程で論理的な力を鍛える必要性がありますので、これから働く人はぜひこの点を意識していきたいですね。

東京大国語大学の入試問題にもなった



実はこの話、私の通っている学校、東京外国語大学2017年度過去問の「リスニング最終問題」でも取り上げられています。過去問を自分で解きたい方は赤本なりでぜひやってみてください。


まとめ



今回の話はどっちの文化が優れていてどっちの文化が劣っている、と言う話では決してありません。コミュニケーションをする上で、うまく成立しないなと思ったらぜひこのハイコン・ローコンの話を思い出して確認してみてください。

特にグローバルに働きたいと思っている方は意識したいですね。実はこの東京外大でも取り上げられたこの話は、こちらの本で書かれていることが元になっています。興味ある方は読んでみてください。結構面白いですよ。



それでは今回はこの辺で、バイバイ👋

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