中国語 歌で勉強論争??
今回の話は動画でも解説しています。↓
皆さんこんにちはShuです。最近Twitterでとある方が次のように発言していました。

『中国語の歌で勉強してるという方は、すぐやめて下さい!!中国語の歌は声調が完全に無視され、全く考慮されません。なので、歌で覚えた文字や単語は声調を間違っている可能性がかなり高いです。発音だけでなく、文法面でも注意があります!』
これに対してそこそこ多くの「批判」のようなリプが見られました。具体的には例えば、
・歌は発音を覚えるのによい
・歌は中国語を勉強しようというきっかけになる
・声調がある歌もある
などなどですね。こういった両者の意見を踏まえて今回は、じゃあ実際に「歌を使った中国語の勉強ってどうなのよ?」ということについて解説していきます。
それぞれの立場が違う
今回の論争ではそもそも発言者の立場が違っていました。
前者は中国語を初級者に教える講師の方
後者は初級を脱した自分も学習者or学習者だった方
でした。
※この場合の教育者は主に初級をターゲットにしている
中国語の講師の方が歌を学習教材としておすすめできない理由は、中国語の特徴によります。それは【声調言語】という点です。
中国語の歌は当たり前ですがメロディーに乗せて歌うので声調が乱れるケースがほとんどです。
発音、特に声調が命である中国語においてこれはかなり致命的です。初級者の段階では発音が完璧にできないことが多いので、声調が乱れている歌の影響をダイレクトに受けやすいので中国語講師としては積極的におススメはできないんですね。
それに対していち学習者目線から見れば、歌というものは非常に良い教材です。興味関心からのモチベーションアップにもつながりますし、好きな歌手や曲があるのなら何度もリピートできますから脳内占有率にもつながりますし、歌詞も覚えれば単語力向上にも役に立ちますね。
ですからここで誤解していただきたくないのは
発音からしっかり体系的に学びたい方には歌の勉強を積極的にオススメできないが、モチベや自分の好きな歌手がいる等、きっかけは歌であることも往々にしてあるのでその点を否定しているわけではない。
ということです。
この話は「中国語を教える先生の観点から見ると歌はベストではないし、中国語の命でもある発音学習の邪魔になる可能性もある」ということでもあります。
それでは次項で、実際に歌で勉強したいとき、どのようなデメリット・メリットがあるのかを解説し、その後歌を使う際の注意点を説明します。
歌で学ぶことのデメリット
✅【声調乱れ問題】
→歌うとわかりますが正確な声調の再現はミュージックに伴うリズムのせいで正直無理です。ただし完全に無視されているわけではないので、この点は歌によるところが大きく、噂によるとラップは声調があるらしいですよ。
ですから発音の特に声調ができていない人はダイレクトに正確でない発音の影響を受ける可能性が高いので気を付けたほうが良いということです。
✅【歌特有の表現問題】
→これも歌によりますが、歌詞の中にはかなり詩人のようなものもありますし、きざ臭い?セリフなども多いので覚えてそのまま使うときは注意が必要ですね。
歌で学ぶことのメリット
✅【プロソディの習得に繋がる】
→プロソディとは、中国語特有のリズム、イントネーション、ストレス、ポーズなどの要素のことで、各言語によってその特徴は違います。
例えば、私たちが日本語を話しているときのリズムと、中国語や英語を話しているときのプロソディは異なります。
日本語では、「ア、イ、ウ、エ、オ、カ、キ、…」などの音節は、基本的にはどれも同じ長 さに発音しなければなりませんし、短音は1拍、長音は2拍と、長さがキッチリと決まっ ています。これと対照的に、中国語では、音節の発音の長さがバラバラです。日本人がしゃ べる中国語のリズムは、中国人の耳にはぎこちなく響くことが多いようです。その理由は、 日本人は、中国語の音節を、日本語のくせで、同じ長さで発音してしまいがちだからです。
このように中国語独特のプロソディを獲得することは、母語話者でない私たちにとって簡単なことではありませんが、実は歌を使うことで「プロソディ」を身に着けることができます。
ここでは「声調」はプロソディの中に含んでいません。なので普通の中国語の歌に声調乱れが問題点として存在していることに変わりはなく、声調に関しては別途練習を重ねる必要があります。
「声調」=イントネーションではないと考えてくださいね。
✅【興味関心からの積極的学習へ】
→これは言う必要もないと思いますが、音楽は楽しいものですよね。勉強という意識を持たずとも普段から音楽を聴いている方がほとんどのはずです。
中には好きな歌手や曲がきっかけで中国語を学習し始めた方もいるでしょう。このように音楽は中国語への興味関心への入り口としての役割を果たしてくれるんですね。
歌を教材として使う際の注意点
前述したように音楽で勉強するにはデメリット・メリットがあることをお話しました。人によっては「中国語を音楽で勉強することには反対」という方もいるのでしょうが、しっかりと抑えるべき注意点を意識すれば非常に良い教材となりえます。この項では「指導者側目線」と「学習者目線」から注意すべき点を見ていきたいと思います。
①指導者側目線
✅【初学者の発音のメイン教材としては使えない】
→発音がまだまだ完璧にできていない初学者の段階では声調乱れの影響をもろに受けてしまう可能性があるので「発音の教材」としては使わないほうがよいでしょう。中国語の講師であればまずは生徒に「正しい発音」を教えるべきでしょう。
✅【使用する場合、適当に選ぶのではなく、初学者にもわかる表現や単語が多いもの、声調乱れが少ない曲を選ぶこと】
→かといって教材として使用できないかと言ったらそうではなく、曲によっては声調乱れが少ない曲も存在します。特にラップはそのまま声調が存在するので教材として使用しても何の問題もないのでおススメです。
また歌詞の中の表現が初級を超えたものであることも往々にしてあるので指導者は適当に選ぶのではなく、なるべく簡単な単語が多いものを選ぶと良いでしょう。
ですので選ぶ際に「声調乱れが少ない・簡単な表現が多い」などに関しては注意を払いましょう。
✅【完璧に正しい発音、ここでは機械的な発音も練習させること】
→そうはいっても結局は「歌」です。やはり歌えるようになったからといってそのまま話せるようになるとは限りません。大事なのは「正確な発音」がちゃんとできることです。ですから指導者は歌の歌詞を授業内で正確は発音で言えるように見本を見せながら、生徒にも練習させたほうがよいでしょう。
②学習者目線
✅【根本的な元の発音ができているかどうかは確認した方が良い】
→歌の声調乱れによる影響を無くすためにご自身で正確な発音ができるかどうかは必ず確認しましょう。自分で発音があっているかどうかわからない人は、発音だけはなるべく先生や、ネイティブスピーカーにお願いするようにしましょう。
✅【教材を選ぶときは、簡単なものを選んだ方が良いが、それ以上に自分の興味関心のあるものを選んで覚えるぐらいまで歌えるようにすることが大切(→継続が命)】
→指導者側からすればなるべく声調乱れが少なく、かつ表現が簡単なものが理想ですが、学習者目線から見ればこの点はあまり気にしなくても良いでしょう。
あくまで学習者にとって重要なのは「継続」です。自分のお気に入りな曲を探すことを優先しましょう。
✅【こちらも、できれば歌詞にピンインを振ってみて機械的な発音もできるようにしておいた方が良い】
→これは指導者側目線の意見と同様、歌を使う際は歌詞にピンインを振ってみて、自分で機械的な発音もできるようにしておきましょう。
ここで言う機械的な発音とは、皆さんが普段から「学習に使う問題集のCD音源のような模範的な発音のことです。必ずこちらも練習する癖をつけましょう。
結論
✅歌は声調乱れ問題などがあり完璧な学習教材とは呼べないが、中国語特有のプロソディを身につけたり、楽しく学習するのには非常に効果的である
✅しかし、歌を覚えれば中国語がそれだけで上手くなるわけではなく、同時にCD音源のような機械的な発音、そして声調を正しく発音できることも重要である
✅教育者とそうでない者で、歌による学習法がおすすめできる範囲は異なるが、今回話した中国語の特徴、歌を使う際の注意点に関しては理解しておいた方が良い