中国語は文法が簡単??

中国語って発音は難しいけど、文法は簡単だよ。
こう言った発言は中国語を学んでいると必ず耳にするように思います。私自身も英語や他の言語と比べて中国語の文法は非常に簡単なように思えます。
何事も突き詰めれば難しいので、例えば “了” に代表される難文法も中にはありますが、そんなものは学者さんで無い限りはそこまで神経質にならなければいいだけの話です。
ただ基本的なことは、他の言語と比べて初学者にとって非常にマスターしやすい言語が中国語と言えるのは確かでしょう。
ではなぜ中国語文法が簡単だと言われるのでしょうか?今回は「何となく」を飛び越えて、「孤立語」という見方から中国語の文法がなぜ簡単なのか、そしてそれを知っておくことで学習に今後どう活かせるのか説明していきます。
孤立語とは何か
孤立語とは、形態論的類型における古典的な類型の1つで、接辞などの形態論的手段を全く用いず、1語が1形態素に対応する言語である。
何のことや??って感じですね。ここで一つ一つの単語の説明していきます。
・【形態論的類型】:主に文法的特徴から言語を分類すること
・【接辞】:文法的な機能を伴い、それ自体では語として自立しない形態素を指す
・【形態素】:それ以上分解できなくなるまで分解した、意味を持つ表現要素の最小単位
つまり簡単に言えば「孤立語」とは
『単語が語形変化を起こすことはなく、文法的関係が語順によって表される言語』のことです。
まずはこの孤立語という単語を知っておきましょう。中国語が代表ですが、他にもチベット語やタイ語などがあります。
他の二つと比較
孤立語の他にも実は「膠着語(こうちゃくご)」と「屈折語」というものもあります。簡単に説明すると以下の通り
・【膠着語】:日本語や韓国語に代表される、助詞や接頭辞、接尾語などを語につけて文法的関係を表す言語
・【屈折語】:主にラテン語に代表され、英語やスペイン語など単語が語形変化を起こして文法的関係を示す言語
この二つと比較することで中国語に代表される「孤立語」がどれほど学習に簡単かが見えてきます。
まず日本語に代表される膠着語は単語の前や後ろに形態素をくっつけて、その関係を変化させます。
例えば「話す」という基本形があって、それを「話した」「話される」「話している」などと形を変化・語を追加させて、その時制などを変えます。
英語などの屈折語は例えば、「write」を「wrote」「writing」などと語形を変化(これを屈折と呼ぶ)させて時制などの文法的関係を表します。
では中国語はどうでしょうか?
例えば「行く=去」は形を変えることがあるのでしょうか?結論から言うとありません。行く=去は過去でも未来でも“去”のままです。他の語についても同じです。
ここが中国語が簡単と言われる最大の所以です。
要は例えば英語などは動詞を一つ覚えたら、時制や主語によってその形を変えなくてはいけないため、不規則動詞などは一つの単語につき複数別途覚えなくていけない形があります。(以下の写真の通り)
しかし中国語であれば過去でも未来でも主語が誰であろうが関係なく「行く=去」と言う形は絶対に変わりません。他の形を覚えなくていいので非常に楽に単語を使用することができるんですね。
学習に活かす
ではこの「孤立語」最大の特徴『語形変化を起こさない』ことがどのような学習に役立っていくのか、効果的だと考えられる学習法を提示したいと思います。
✅【入れ替えフレーズ勉強法】
孤立語の恩恵を最大限に活かすことができるのこの勉強法でしょう。入れ替えフレーズ勉強とは、文の一部の単語を入れ替えてどんどん違う文を作って覚えていく勉強法です。
例えば
①我去图书馆。(私は図書館に行く)
この「我」と「图书馆」と言う部分を入れ替えて別の文を作っていきます。
②我去学校。
私は学校にいく。
③老师去博物馆。
先生は博物館にいく。
④我哥哥去美国留学。
兄はアメリカ留学にいく。
このように語形変化が無いため、英語のように「あれ?過去形だから、d,edをつけて過去形にして…」とか言うめんどくさいことを考える必要がありません。単語を入れ替えるだけで簡単に文が作れてしまいます。
単語が無限なのに対して文法はある程度有限です。会話の中では「型」と言うものがあまり意味をなさない言語はあります。
例えば日本語は語尾を変化させて相手との関係や、自分の性格を表しています。「そうですね」と「そっすね」は意味は同じでも形を変えて使う場面も選ばなくてはいけません。「おいしいわよ」と「おいしいっしょ」も女性か男性かで多くは使い分けられています。
しかし孤立語はこう言った面倒ごとを考えなくていいため、この入れ替えフレーズ勉強法が最大限に発揮できます。ぜひやってみてください。
ハイコンテクスト(高文脈判断言語)
この孤立語の中でも特に「時制」が無いと言う点が最大のメリットのように思えます。時制がないということはいちいち動詞変化を考えなくていいことにつながるので学習の負担が減ります。
ヨーロッパ言語だと一つの動詞に対して「現在形、過去形、進行形、主語が三人称ときは〜、主語が女性の時は〜」みたいな感じで、たった一つの動詞形容詞に関して覚えなきゃいけないことが多すぎる!!
これが無いだけでかなり楽ですね。しかしながらこう思う方もいるのでは無いでしょうか?

でも時制がないってことは文脈判断ってことでしょ?それって難しくない…?
この話は別記事にも書く予定ですがここでは簡単に説明します。まずは下の画像をご覧ください。
✔️【ハイコンテクスト】:高文脈判断言語、日本語や中国語などを母国語とする社会で当たり前とされる「言わなくてもわかる」文化。言語的に考えれば、会話のシチュエーションや相手の表情、話し手の様子などから直接的に言葉を発しなくても相手の言わんとすることが読み取れる言語のことを指す。日本人の「空気を読む」や「言わなくてもわかるだろ」と言う文化もここに起因しているかも。
✔️【ローコンテクスト】:低文脈判断言語、一概には言えないが主に欧米に多い印象が強い。いわゆる「はっきり言わないと分からない」「結論から言え」と言った考えが根強くある社会のこと。アメリカ人に日本人の「察して文化」が通用しないと言う理由は、英語と日本語のコンテクスト具合に大きな差があるからである。
この図から分かる通り、日本語と中国語はどちらも「ハイコンテクスト」に入ります。つまり日本人なら中国語に時制がなかろうが文脈判断に依存することが多かろうがそれほど問題にはなりません。
あれ?相手が言っていることは過去のことか、未来にことか?などと会話の中で疑問になることはほとんどないと思うので安心してください。
まとめ
✅孤立語とは『単語が語形変化を起こすことはなく、文法的関係が語順によって表される言語』である。
✅入れ替えフレーズ勉強が効果的
✅中国語は日本語と同じハイコンテクスト言語なので時制がないから文脈判断しなきゃいけない!などと心配する必要はあまりない。
✅中国語は「文法が簡単」だと思う
さてそれでは今回はこの辺で!バイバイ👋