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中国語検定の良問4選(過去問練習は単なる知識の確認では勿体無い)

良問とは何か

shu
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こんにちは。今回は「中国語検定で過去に出題された問題の中から非常に学びがある」と思った所謂『良問』を紹介していきます。

選択範囲は第92回〜第105回までの3級・4級の第二問です。出典を必ず明記してありますので「引用」という形で問題を使わせていただき、そこから何が学べるかをお伝えしていこうと思います。

さて、まず『良問』の定義からですが、今回は私の方で以下のように設定しました。

  1. 一度に二度美味しいもの
  2. 多角的に深い学びがあるもの

非常に抽象的ですが、①についてはシンプルで一問で二つ以上のことが同時に学べる問題のことです。二つ以上の「二つ」とは“対”になっているということで、例えば「早い」という形容詞を学べたら「遅い」という形容詞も同時に学べる問題というのを指します。②については、まず「表面的な知識」だけしかないと正解に辿り着けず、そのものが持つ別方面の知識、多角的な知識を抑えておかないといけない問題のことを指します。

言語というのは「1=1」ではなく、「1=多」または「多=多」であることがほとんどですから、『一つの単語に様々な使い方がある』ということを教えてくれる問題は貴重です。(②がそれに当たると考えています。)

定義を設定したことで紹介する問題のタイプを説明します。今回はこの4つ…

  1. 一度に二度美味しいもの
    「就」と「才」の違い(動作や時間が早いか遅いか)
    「跟」と「从」の違い(“〜から”という日本語はどう訳されるか)
  2. 多角的に深い学びがあるもの
    「能」の使い方
    結果補語の広さと発想

それでは見ていきましょう。

一度に二度美味しいもの

この項では「一度に二度美味しい」つまり「一問で一気に二つ以上のことが学べる」問題を取り上げます。(ほとんどの問題がそうなのですが…)紹介するのは2問で第94回3級、第99回3級からの出題です。

「就」と「才」の違い

(3)我们十点就来了,可是他十点半(   )来。

①就
②才
③再
④又

(第94回3級 大問2 (3)より引用)

まずはこの問題です。良問ポイントは時間や動作が早いか遅いかをイメージさせる「就」と「才」を同時に学べる点です。「就」または「才」のどちらか一方だけ知っていれば解ける問題は他にもありましたが、この問題は二つを同時に学べるので良問としました。

簡単な「就」と「才」の違いについて説明します。まず「就」は「马上就~(もうすぐ〜する)」「一~就~(〜したらすぐ〜する)」などからわかる通り、とにかく動作や時間などが早いことをイメージします。一方で「才」は「才回来了(やっと帰ってきた)」「才明白了(ようやく理解した)」のように時間が思いのほかかかってしまったことをイメージします。両者の違いをまとめますと以下のようになります。

動作や時間が… 日本語では…
就(jiù) 早い すぐ、もう(既に)、早くも
才(cái) 遅い やっと、ようやく

今回の問題はどうでしょうか。

我们十点就来了可是他十点半(   )来。

重要なのは前の「就来了」をどう読むかです。「早い」ことがイメージですから「10時にはもう来ていた」とか「10時に早くも来ていた」なんて訳せますね。次に後ろに「可是(しかし)」がありますから「就」とは反対に「遅い」ことがイメージにある「才」が来るはずです。従って日本語訳とは正答は以下のようになります。

「跟」と「从」の違い

続いては中々初学者には難しい「跟」と「从」に関する問題です。何が難しいの?って思う人もいるかもしれませんが、「〜から」をどう訳すかが争点になる問題です。第99回3級から引用します。

(3)你(   )谁学的汉语?

①从
②跟
③对
④往

(第99回3級 大問2 (3)より引用)

さて正解はどれでしょうか?学びたての人はもしかしたら「从」を選んでしまうかもしれませんが、正解は「跟」です。初級段階では概ね以下のように記憶している人が多いはずです。

  1. 「跟」→「〜と(一緒に)=跟~(一起)」「AとBは同じ=A跟B一样」など
  2. 「从」→「〜から」(从我家到学校=家から学校まで)など

こう記憶していると、上の問題を「あなたは誰から中国語を学んだのですか?」と考えてしまった時に間違えてしまいます。通常「〜から〜を学ぶ」と言いたいときは「跟」を使うのが適切です。なぜなら「跟」に動詞として「〜についていく」という意味があり、そこから「誰かについて〜する」という意味もあるからです。つまり「跟~学习」は「一緒に学ぶ」という意味ではなく(そういう言い方もありますが)、「〜の下で学ぶ」とか「〜にくっついて学ぶ」とか「〜に〜を学ぶ」と言った言い方があるんですね。

一方で「从」は基本的には場所や時間の起点を表します。例えば「从东京去(東京から行く)」とか「从星期五开始(金曜から始める)」などがそれです。「从」の後ろにはほとんどが場所か時間が来ますので、仮に人間を入れる場合は注意しなくてはならず、以下のように人称に「这里」「那里」をつけて「〜(人)のところ」と場所化する必要があります。(以下の②が正解)

  1. 我从高橋听说了这件事。✖️
  2. 我从高橋那里听说了这件事。◎

こうした点がわかっていれば上の問題も解くことができます。ポイントは「跟」には「跟~学习」の形で「〜について学ぶ/〜の下で学ぶ/〜から学ぶ」という表現があること、「从」の後ろに人が来る場合は「人+这里」「人+那里」をつけて場所化する必要があること、この2点を理解しているかどうかです。

多角的に深い学びがあるもの

次は「多角的に深い学びがあるもの」言い換えれば「表面的なものから一歩踏み込んで知識の獲得ができる」問題です。紹介する「能」の使い方に関しては2問で、結果補語が1問あります。それぞれ94回4級、103回4級、97回3級からの出題です。それではまず「能」の使い方についてです。

「能」の使い方

(1)法律规定,满18岁以后才(   )开车。

①会
②应该
③要
④能

(第94回4級 大問2 (1)より引用)

まずはこの問題。後ろの「开车(運転する)」に引っ張れられて「会」を選んではいけません。この問題は“可能”を表す「できる」という日本語が、中国語ではどういう助動詞で表されるのかを問いているわけで、「会」と「能」の違いを明確に区別できていることが大切になります。復習として二つの違いを表面的にまとめてみましょう。

基本の意味 視点
会(huì) 習得して〜できる できるorできない
能(néng) 能力的に〜できる どれくらいできるのか

初級段階では上のように覚えておければ一応はOKです。「会」は『習得して〜できる』という意味を表すのが基本で、例えばスポーツや語学などによく使われます。(「会说英语」「会踢足球」など)

一方で「能」は視点が「能力的に〜できる」に移り、例えば「100mを12秒で走れる」とか「1分間で300文字タイピングできる」とか、そういう能力に着目して使われます。

しかしこれだけでは不十分で、「能」は他に『客観的な条件のもとで~できる』という重要な意味があります。(もう一つは「許可」)この問題ではこれが問われているわけです。

「法律规定」という客観的条件があって、「满18岁以后(満18歳以降)」なら運転できるという意味を表すので「能」が正解になるわけです。「开车」だけをみて『運転は習得してできることだから「会」だ!』と考えてはいけないわけですね。よく見ないと解けない問題だと思います。

ちなみに似たような問題で以下のようのものもあります。

(3)六月北海道还(   )滑雪吗?

①能
②会
③要
④得

(第103回4級 大問2 (3)より引用)

こちらも考え方は先ほどと同様で、「六月の北海道」という「客観的条件の下」で「スキーができるか」を聞いています。これを『「滑雪」は練習してできることだから「会」だ!』と考えてしまうと不正解になってしまうわけですね。

以上より上の2問の解答は下のようになります。

結果補語の広さと発想

最後は「結果補語」についてです。中検3級では結果補語がよく出てくるんですが、「完」「到」「懂」「错」などの定番なものばかり学習するケースが多いのかなと思います。そうしますと、これは結果補語になる、これはならないみたいな線引きが出来てしまい、『基本的には全ての動詞・形容詞が結果補語になり得る』という根本的なことを忘れてしまうのです。この原理を思い出せてくれるのが以下の問題。

(7)这里已经坐(   )了人,没有地方坐了。

①累
②早
③完
④满

(第97回3級 大問2 (7)より引用)

この問題は「結果補語」とは何かを捉えるのに非常に適しています。結果補語は簡単に言えば「動詞+結果補語」の形で「動作を行った結果どうなったのか」を補填するものです。例えば「書き間違えた」は「書いた結果間違ってしまった」ですし「食べ終わった」は「食べた結果終わってしまった」です。そして結果補語の大切な原理は『基本的には全ての動詞・形容詞が結果補語になり得る』という点です。

極論を言えば、「洗った結果死んだ」のなら「洗死了」が言えますし、「泣いた結果目が黒くなった」のなら「哭黑了」も言えます。結果補語は定番のものはあれども、その発想は意外と自由です。

今回の問題では「座った結果どうなったのか」を尋ねていますから、それぞれの選択肢が持つ意味を考えて適切なものを選択します。

①累=疲れる(座った結果疲れる?)
②早=早い(座った結果早い?)
③完=終える(座った結果終える=座り終わる?)
④满=いっぱいになる(座った結果いっぱいになる=満席になる◎)

上記4つにおいて「座った」結果として導けそうなのは「满」のみです。後半の「没地方坐了」からも「どの席も人が座って満席になった」という文脈がわかれば正解に辿り着けるはずです。ちなみに「場所+坐满了+目的語(人)」の語順になっているのは現象文という項目で説明されます。(→こちらから存現文の資料を探してみてください

さて最終的な答えと日本語訳は以下のようになります。

終わりに

今回は4つほどの項目を拾い上げて中国語検定の良問を紹介解説していきました。HSKと違って中国語検定は「知識をしっかり満遍なくインプットし、適切な解答を選べるか」を聞いてくる問題が多いです。ただ暗記しているだけでは足りなくて、一つ一つの使い方やよく出る組み合わせ、似た語との区別など、かなりがっちり勉強する必要があるため曖昧な知識が減るという点で非常に良い試験です。

「中検って重箱の隅をつつくような問題ばっかり出るんでしょ?」という人がいますが(私も昔はそう思ってました)、そんなこと決してありません。特に中検2級まではしっかり勉強していれば社会人で忙しくても十分合格することができます。

中検対策では過去問を解くのがベストですが、そのやり方もただマルバツをつけるのではなく、今回紹介したように積極的に問題から知識や考え方を「吸収」する姿勢を持って取り組んでみてください。たった1回分の過去問でも、5回分ぐらいの知識が身につくかもしれません。

「自分でやるのが難しい」、「何が重要なのかそもそもわからない」という方は思い切って先生を見つけるのもありでしょう。語学講師の授業料(マンツーマン)は意外と高額で、1レッスン6000円〜9000円が相場です。

しかし、私の場合は個人でやっていることもあり、1回2500円(4回セットで月1万ピッタリ)で行っています。質問も学習相談もし放題なので定着率も平均半年と非常に長く、多くの生徒さんに中国語を教えています。主に発音+中検3級までの指導がメインですので、興味がある方はぜひ以下のページから申し込みをしてみてください。皆様とお会いできますことを楽しみにしております。それでは今回はこの辺で、さよなら。

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