未分類

音読は「なりきり」が重要?!ースピーキング向上に繋がる音読練習法

音読、それは言語学習には欠かせない要素

何か言語を学習する際、上級者の方に「どうやったら話せるようになりますか?」と質問すると結構な確率でこう返ってきます。

私はひたすら「音読」したよ。

ここからの返答の続きは個々人によって違いますが、シャドーイングが大事とか、とにかく声に出して読むことが大事とか言われますよね。

今回の記事では「なぜ音読が大事なのか?」に関して詳しく科学的に説明するつもりはありませんが、その代わりに「どのような音読がスピーキング力向上に役に立つのか?」についてちゃんとした根拠を元に解説していきます。

今自分がスピーキングに伸び悩んでいたり、あるいは生徒さんがいてその生徒さんにどのように指導したら良いかわからない、そんな方に役に立つ記事となっていますのでぜひ最後までお付き合いください。

音読練習の重要要素2点

結論から言うと『音読』練習をスピーキングに結びつけ、“話せる”ように繋げていくためには必要なのは『なりきる』ことです。

『なりきる』をもっと具体的に言うと、本番同様の環境を自分で作り出す『バーチャルシミュレーション』を意識すると言うことです。

まずはこの「なりきり」音読の重要性を話す前に、把握しておきたい二つの重要用語を簡単に解説します。

①:転移適切処理の法則
②:インタラクション(相互の影響)

転移適切処理の原則

いきなり難しいワードが出てきましたが、認知心理学や記憶心理学ではこの『転移適切処理の原則』というものが記憶・学習の基本原則と言われています。

転移適切処理の原則:学習時とその学習内容をテストする時の認知処理の類似の程度に注目し,2つの認知処理が類似している場合には長期記憶からの検索が素早くなる。

要は『学習時』と『実践』の状況が似てれば似てるほど、学習したことが思い出しやすくなる、という原則です。

インタラクション(相互の影響)

インタラクション(英:interaction)は相互の影響ということですが、ここでは音声をただ聞いたり動画を見たりするよりも、実際にネイティブと会話するような何かしらの“人との関わり”・“実践”を通した方が言語習得が早いということです。

事実ワシントン大学実験心理学部のパトリシア・K・クール(2003)は以下のような実験を行い、インタラクションの重要性を実証しました。

実験方法(簡略化):英語を母語とする生後9ヶ月の乳児に中国語のレッスンを12回実施した。ここでの中国語のレッスンはレッスン終了段階で、乳児が『英語にはない中国語のいくつかの音声を聞き分けられるか』を確認したものである。
実験方法は4グループに分けた。

①:中国語ネイティブが乳児と対面で指導。
②:動画+音声でレッスンする
③:音声のみでレッスンする
④:そもそも何もしない

すると以下のような非常に顕著な結果が観察されました。

この結果からわかるところは①対面、つまりインタラクションが行われている場合は言語学習(この場合は音声認識能力)スピードが促進されるということです。なぜかと言えば、動画や音声だけでは何もしてないグループと大差がなかったからです。

誤解してはいけないのはこの実験はあくまで乳児を対象にしたもので一概に我々大人に当てはまるものではありません。

しかしこうしたインタラクション(相互の影響)が重要な影響を与えるという結果は我々大人の言語学習にも応用させることができます。

ここで強調したいのは要は「他の人との関わり合いがある学習は、ただ音声を聞いたり動画を見たりする時よりも言語学習に効果的である」ということです。

しかし、だったら音読ではなく『ネイティブと会話しろ!』と言えば良いのですが、一概にも学習者全員がすぐにチャレンジしたりできるわけではないですし、集団授業などでは一人の先生を独り占めもできませんから、そこで音読が登場するわけです。

いよいよ次の項では、では『音読』に如何にして「インタラクション」を加えるかを、転移適切処理の原則と共に見ていきます。

音読は「なりきり」が重要

ここまで①転移適切処理の原則、②インタラクションの用語を解説してきました。簡単に振り返りますと

①転移適切処理:学習時とテスト環境が似てれば、実践時も学習内容が思い出しやすくなる。
②インタラクション:言語学習は人との関わり合いの中で学習することが大切である。

これをまとめて考えますと以下のようなことが言えます。

・学習(音読)時はより実践に近い環境を用意する(想像でも可)
・人との関わり合いを持たせる(これも想像でも可)

これらを『音読学習』に適用させたのが「なりきり」音読です。ここからは「なりきり」音読の具体的な実践方法を解説していきます。

なりきり音読:あたかもその内容が自分と関係があるかのように想像して行う音読。自分の脳内でバーチャル環境を構築し、会話を音読をするならそのキャラに“なりきり”、またスピーチなどの時は主語を「私」に置き換えるなどする。

もっと具体的な実践方法を見ていくと、例えば英語で次のような文章があるとします。

Tom is an English teacher in Japan. He teaches students Math and Science. He is 25 years old. He has three children and two dogs. He lives in Tokyo.

これをなりきり音読する時、主語をTom(He)→I(私)に置き換えて、本当に自己紹介するように読みます。

I am an English teacher in Japan. I teach students Math and Science. I am 25 years old. I have three children and two dogs. I live in Tokyo.

他にも次のような会話文がある際にあたかも自分がそのキャラかのように言うわけです。

A:Are you a student?(あなたは学生ですか?)
B:Yes, I’m a college student.(私は大学生です。)

A:What grade are you in?(何年生ですか?)
B:I’m second grade now.(今2年生です。)

A:What is your major in your college?(専攻は何ですか?)
B:I’m majoring in economics.(経済学を専攻しています。)

一人二役でも全く問題ありません。とにかく「なりきり」音読で脳内でバーチャル環境を構築し、転移適切処理とインタラクションを意識することが何より大切なのです。

他にもできる方法としてよく挙げられるのは以下のようなものです。

・演劇(特に伸びると言われる)
・ドラマのセリフをなりきり音読
・小説を感情込めて読む(子供向けの短いのがおすすめ)

まとめ

さて最後にまとめていきましょう!色々と難しい用語も出てきて少し読みづらかったと思いますが、まとめで再度理解していきましょう。

振り返り

・音読は「なりきり」が大切
☆その理由は?
➡︎転移適切処理の原則:よりリアルに近い形で練習すると、いざ実践になった際に記憶の中から思い出しやすくなる。
➡︎インタラクション:人との関わりを持たせて練習することが言語学習に効果がある。

・「なりきり」音読はとにかく実践または自分に当てはめてあたかも自分のことの様に音読することで、その原則に従えば方法は様々である。

→スピーチなどの主語を「私」に変えて臨場感を持たせて音読する
→会話文のキャラになりきって音読する
→演劇やドラマキャラのなりきりなど

この「なりきり」音読を上手く活用して反復していけば、いざ実戦の時にもスラスラ出てきやすくなると言う効果が期待されるのでこれまで何も考えずにひたすら音読してきた学習者はぜひ「なりきり」を取り入れてみてはいかがでしょうか?

また学校の先生なども生徒に形式的・機械的に学生に音読させるのではなく、キャラになりきらせて音読させてみてください。

ただしこれらはしっかりと反復練習をした上での効果ですので、1回2回などではそもそもどんな音読でも効果は出ないのでその点はご注意ください。何度も何度も繰り返して練習してくださいね。

さてここまで長い話でしたが読んでくださりありがとうございました!皆さんも良い音読ライフをお過ごしください。それではまた次回。

Shuの発音講座


Shuの作文講座

ABOUT ME
SHU
現役東京外大生がお送りするShuBlogは中国語学習者に向けたコンテンツを発信しています。他にもTwitter、Youtube、Instragram等でも積極的に活動していますので是非覗いてみてください。