会話力向上に実戦は避けられない
*今回の話はタイトルでは「語学力」と言っていますが要は「会話力」のことです。
今回は「語学において会話力を上げたいなら実践から逃げていてはダメ」というテーマで書いていきますが「逃げる」という言葉を使っているので少々反感を買いそうですw
まず先日こんな質問を受けました。
人:「中国語を話せるようになりたいけど、実際に人と話をするのが怖くて中々練習できません。一人でできる良い会話の練習方法を教えてください」
この人だけじゃなく他にもたくさんの人がこう思ったことあるのではないでしょうか?次項から私の考えについて述べさせていただきます。(結論:『一人でできる良い会話の練習方法』は僕の中ではないと思っています。)
上げたいのは会話力?スピーキング力?
個人的に思うのはこの方が言っているのは会話力では無く、スピーキング力です。会話力を本当に向上したいけど「一人でできる練習方法」を探しているのならまずは「会話力」と「スピーキング力」の違いをよく理解しておく必要があります。
会話力:スピーキング+リスニング+理解力+コミュ力
スピーキング:スピーキング
スピーキングとは「あなたが」話すことであり、話す内容もペースもあなたが任意に決めることができます。この能力は、一般に『独り言スピーキング練習』や『自分で書いた作文の音読』等で向上させることができます。
しかし会話力は違います。会話とは一般に「相手がいて成り立つ」ものなのでスピーキング以外にもリスニング力や、それこそ言語能力に加えて理解力やコミュニケーション能力というものも必要になります。
私は学生の傍ら中国語講師もやっていますのでスピーキングが苦手な方がいたとしても「相手のペースに合わせて、相手が言いたいことを言い切るまで待つ」ことができますが、言語をまともに勉強したことがない人は外国語を頑張って話している人のペースに合わせてくれません。(当然人によります)
これは至って当然のことで、特にビジネスの上でも、相手の言語力などどうでも良く「勉強中だから仕方がないよね」などと甘い言葉をかけてくれる人ばかりではないでしょう。
各練習法には必ず対象がある
人の数だけ無限の練習方法がありますがそれぞれの練習には必ずフォーカスしたい能力対象があります。(それに伴って付加的に他の能力も一緒に向上することは往々にしてありますが)
例えば
独り言練習:スピーキング
作文:ライティング(+論理的思考力や語彙力・表現力の向上など)
オンライン会話:スピーキング+リスニング+理解力+コミュ力
もちろん練習方法によってはフォーカスしたい能力対象が複数であったり、同じ練習方法でもアプローチを変えれば人によって異なる能力を対象にすることができますから上にあげた例が一概には正しいとは言えません。
しかし例えば会話力を上げたい人が読解の練習ばかりするのはいささか遠回りな気がします。当然読解練習でも結果的に見れば文構造や内容理解力、語彙力の向上など「会話力」に必要な要素は付加価値的についてくるでしょうが直線的なルートではありません。
会話力を向上させたければやはり「実際の会話で練習する」しかないのです。
会話が苦手な人の特徴
「会話力を伸ばしたければ会話すればいいのか!よし、すぐにオンライン会話に申しこもう!」と積極的にチャレンジできる人ばかりではないでしょう。個人的には会話が苦手な人の特徴はすぐに思いつく限りでは次のような人です。
①そもそも言語能力が足りない人
②言語能力は十分なのに自分の力に自信が持てない人
③内向的な人
④話すことがない人
そもそも言語能力が足りない人
学習始めから時間がそれほど経っておらずまだ自分で文章を作って書くことすらままならない人はそもそも会話力以前に文法や語彙など4技能に関わる根幹の部分を先に鍛えるべきです。1000~2000単語もろくに覚えていないのにいきなり会話をするというのはいささか無理があります。
マルチリンガルのとある人が必要最低限の200語を覚えたらすぐ会話を実践すると言っているのを聞いたことがありますが、おそらく、普通の人が真似しても単語羅列でまともな会話にならず気まずくなって終わります。
「身についた」という程度は人によりますのでなんとも言えませんが、個人的には
文法を一通り学習して単語も1000単語以上覚えて、完璧で無くても頭の中で自分で文章を組み立てられるようになってから
この状態になってからでも会話練習は遅くないのかなと思います。
言語能力は十分なのに自分の力に自信が持てない人
アドバイスが欲しいと言われて一番心理的に厄介なタイプが「言語能力は十分なのに自分の力に自信が持てない人」です。(厄介とか言ってすみません。)
まず自信が持てないというのは私にどうすることもできません。綺麗事をいくら他人が言ったところで気持ちの面で変化を感じられるかどうかは悩んでいる本人だからです。
言語力的に十分であるというのは先ほどの条件をとっくに満たしているのにいつまでも自信が持てない人のことですが、その多くは「他人の目を気にする」「完璧でないといけないと思っている」ことが多いです。
過去に馬鹿にされた経験があるのか、笑われた経験があるのか、少なからずトラウマや思い込みがあるのかはわかりませんが、一生懸命話そうとしている人を馬鹿にする人は普通いません。(いたらそいつはかなり性格が悪いです。)
また「円滑に会話が成り立った」「相手が自分の言葉を理解してくれた」という経験が少なすぎるが故に「自信が育っていかない」ケースも往々にしてあります。
例えば、英語で、発音はジャパニーズイングリッシュなのに、全く問題なく会話が成立していることは珍しく無く、そういう人は「自分の言葉は相手に伝わる」という認識をしっかり持っているからこそ自信を持って会話に臨むことができるのです。(本人は無意識かもしれませんが)
この「自分の言葉は相手に伝わる」という自信は残念ながら『実践を通して』しか育てることはできません。誰にでも自信が持てないスパンというのはあるものですので実践を通して鍛えていきましょう。
内向的な人
次は内向的な人についてですが、内向的というのは人によって様々です。例えば小学校や中学校で私がよく覚えているのは
・人前や明るい人とは話すときは無口になってしまうのに、共通の趣味を持つ人と話すときは誰よりも大きい声で話す人
・大勢では無理だけど、1対1だと力強く話してくる人や、そもそも誰とでも会話ができない人
など様々ですが、大体は相手に心を開くのに人より遥かに時間がかかる場合か、共通の趣味や好みがあれば仲良くなれる人である場合が多い気がします。
そう言った人に対してできるアドバイスは「共通の趣味や好みを持つ人を会話相手に選ぶしかない」です。内向的なのなら無理に外向的な人と付き合わなくてもいいですし、趣味が全く合わない人に合わせる義務はこれっぽっちもありません。自分の住みやすい環境に自分を置くということは会話力以前に非常に重要なことです。
「大勢は無理だけど、1対1なら話せる」という人であれば対処は簡単で、オンライン会話で話しやすい先生を見つけるだけです。ここで「オンライン会話にチャレンジするのはちょっと…。」という人には残念ながら僕にはできるアドバイスはありません。自分に合う人・先生は天から降ってくることは非常に稀なのでそこは自分で頑張って探しましょう。
話すことがない人
話すことが思いつかず会話ができない人はもはや言語力は関係ないので「話すことを考える」努力をしましょう。かなり有効なのは読書です。なんでも構いませんので「自分の興味あるテーマ」を決めて知的好奇心を満たしましょう。
読書が苦手な方は…。そもそも話すことが思いつかない人は相手に興味がなかったり普段から色々なことに知的好奇心を向けずにただYoutube見てるだけの人が多いです。「努力して相手に興味を持ちましょう」と言っても「どうすればいいかわかりません」とそれすらも調べようとしない人もいるのでできるアドバイスは少ないです。
しかしこうした人は内向的な人同様やはり「自分の趣味・好み」になるとマシンガントークしてくる場合が多いので「話すこと」を探す前に「自分が何に興味があって、何が好きなのか」を客観的に細かく分析する所から始めてみてはいかがでしょうか?
結論:どんな理由があれど逃げてはいけないフェーズがある!
最初の私が引っかかった質問を再度確認すると
人:「中国語を話せるようになりたいけど、実際に人と話をするのが怖くて中々練習できません。一人でできる良い会話の練習方法を教えてください」
私が今精一杯できるアドバイスとしては、
①人と話すのが怖いのはなぜか理由を考えてください
②その理由が言語力なのか自分の性格なのかを分析してください
③紹介したように会話が苦手などんな理由にも乗り越えるべき壁があるので、それだけにはチャレンジしてください
④チャレンジしたのに変わらなければ再度①に戻って再考してください
前提として私としては「一人でできる良い会話の練習方法」はありません。会話とは自分と相手がいて初めて成り立つものです。会話の参考書を使ってCDを使って練習するのはスピーキングとリスニングの練習であって本当の意味で会話の練習ではないです。会話力は名前の通り「会話」を通して身につくものですので、まずはその認識をしっかり持ちましょう。
しかし「自分に有利な状況で練習する」というのは非常に大切です。その点はわざわざ自分を追い込まなくてもいいと思います(例えば内向的な人が外向的な集団の中で無理に溶け込もうとするなど)
・大勢が無理なら1対1のオンライン会話を活用する。
・話すことがなくて間が持たないなら、事前に話すことを考えておく。
・単語や文法の力が未熟なら会話の前にまずはそれらを十分鍛える。
など、できることは必ずあります。ただそういった解決策の中でも避けられないフェーズというのはあります。例えば『1対1なら大丈夫だけど、心を開ける先生を探すのに時間がかかる。』『事前に話すことを考えるのに労力を使う』などです。
しかしこうした壁から逃げ続けてはいつまで経っても会話の練習はできるようになりませんから、その点は覚悟して頑張っていきましょう。
以上私からの精一杯のアドバイスでしたがいかがでしたでしょうか?参考になった人、ならなかった人、たくさんいると思いますが理解してくれる人だけ理解してくだされば結構です。
それでは今回はこの辺で、また次回お会いましょう!バイバイ!